モノローグ
■「名月荘と石んこ」□□□■□

旅の目的は人それぞれである。 「温泉でも行って、のんびりしようか…」をきっかけに10月初旬の山形へ行くことにした。

まずはじめに決めなければならないのが、そう「宿」である。 どんな目的の旅であろうと、もっとも大切なのが宿選びではないだろうか。 泊まる宿が自分にあっているか否かで、旅の印象もがらりと変わってしまうからだ。

今回は迷うことなく「名月荘」に予約を入れてみた。 ここは以前よりガイドブックで目をつけていた宿の一つである。 一ヶ月前にもかかわらず連泊は無理、残念ながら一夜のみの宿泊となってしまった。

くどいようだが、旅行者にとっての宿選びはひとつの大きな賭けとなる。 本やインターネットの情報だけでは、その本質まで知ることはできないだろう。

《お風呂は岩風呂、檜風呂でございます…》

それは単なるイメージでしかない。 とにかく、行ってみなければわからないというのが「宿」である。

そんな私の宿選びには「ホスピタリティ」という言葉が付いてまわる。

「ホスピタリティ」=もてなしの心

一人一人の従業員がもてなしの心で接してくれる宿、そこは暖かさに満ちている。 もてなしの心は自然と客に伝わり、よりいっそう居心地のよい空間を創りあげていく。

料理は特別豪華だったり、奇をてらった物でなくてもいい。 地の素材や旬の物で十分においしい。 一つ希望を言わせてもらうとするならば、「米は美味しく」ということだろうか。

お酒の品揃えや扱いも大事な要素のひとつ。 美味しい料理とお酒の融合(=フュージョン[Fusion])はワイン、日本酒、焼酎…いずれの場合も至福の時をもたらしてくれる。

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実は今回の旅行中はずっと雨だった。 それがまたのんびりとした旅行の気分を増幅してくれる。

私の場合、夫婦で旅行に行けば必ずと言っていいほど早く寝てしまうようだ。 今回もその例にもれることはなかった。 すっかり料理と酒に満足した私はテレビも話も早々、深い眠りへと落ちていく。 マツタケの炭火焼と白ワイン(ムルソー)のフュージョンを楽しんで。

早く寝た分、翌朝は暗いうちから目が覚める。

内風呂でうだうだと過ごし、お気に入りの露天風呂へと足を運ぶ。 雨は一向に止む気配がなく、薄墨をひいたようにぼんやりとした視界が薄れていく。 竹林を背景に石塔が立ち、軒を覆うように大きな楓が張り出している。

まだ紅葉には早いようだ…。

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湯船に首まで浸かって見上げれば、湯煙の先に二体の石物がこちらを向いてちょこんとしていた。

「あんまりあくせくしないで、ゆったり生きていこうよ…」

なんとなくそう言っているようにも思えた。

露天風呂で見た「石んこ」も印象的だったが、「石んこ」は色々な場面で目にすることができる。 和風の庭は置物によってもずいぶんと印象が変わってくるので面白いと感じた。

名月荘」と「石んこ」…心温まる融合であった。


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